日本のエネルギー自立への道
桐生 悠一
[黒潮発電資料6]

特願2015-56889 潮流発電パネルと係留索




1.概 要



(1)要 約 書

【課題】潮流発電に関しては、最適単機容量の観点から導かれる最適設計の指針がまだ確立しておらず、また、発電ユニットを多数台利用する場合の好適な設置方法が提示されていなかった。
【解決手段】本発明になる潮流発電パネルは、多数の数十 kW 級の小出力の水力発電ユニットを密集して平板状に装荷することによって抗力係数を高め、潮流の中に部分堰を設けた形で前後に圧力差を作りだし、その圧力差によって単位潮流面積当たりの発電出力を通常のオープンな潮流中の数千 kW 級の水力タービン発電機の2倍強に高出力化することができる。
また、この潮流発電パネルはそれ自体に海底基礎からの係留索を結合することができ、係留型潮流発 電船や係留型潮汐流発電船や脚部を海底に固定した係留型海中支持潮流発電施設など応用範囲が広い 潮流発電方式の基礎的構成要素とすることができる。



(2)発明の効果

本発明は潮流発電においては少数の大型タービン発電機を配置するのではなく、多数の小型タービン 発電機を潮流発電パネルに集積した状態で配置する方式が性能面で優れ、経済合理性があり、水素化 社会実現の一翼を担えることを示し、そのような発電パネルを装備した係留型潮流発電船に関して4 件、係留型海中支持潮流発電施設に関して1件、潮流発電パネル本体に関して1件の幾何学的構成を 開示した。潮流発電パネル方式を採用して潮流発電を実用化するに当たって、これらの中から与件に 好適なプランを選ぶことにより開発の自由度が増し、正しい方向性を持った実用化がより早く実現で きる効果がある。



(3)産業上の利用可能性

本発明の実施例1には数値例として 30,000 m2 の潮流発電パネルを挙げており、秒速 2mの潮流にて 出力約 15 万 kW と試算結果を示した。某社の資料によれば、ロータ径 100mの風力発電機の定格出 力は 3,000kWである。定格出力で比較すると、この風力発電機 50 基が前述数値例の係留型潮流発電 船 1 隻に相当する。
風力発電機の構成要素は強固な基礎、支柱、回転自在な発電機ナセル、風力タービンであり、見事に 単純である。対する係留型潮流発電船は海底基礎と係留索に係留された約 2 万トンの双胴船に潮流発 電パネルを懸垂・固定し、船上のスペースには電力プラント、水素生成プラント、管制施設等が置か れた複雑なプラント複合体である。工業常識に照らせば、同じ定格出力に対して風力発電の方が潮流 発電より投資金額が安価であろうと判断されよう。
だが、風は速度や向きが常時大きく変動するが、潮流の流速と方向の変動は風力に較べれば極めて少 ない。実際に1年間運転して得られる総発電力量を、定格出力で同じ期間運転して得られる総発電力 量で除した総合発電効率(総合設備利用率)で比較すると、陸上風力発電は 20%代、洋上風力発電で 30%代と評価されているのに対して、潮流発電は 90%代を期待できる。年間総発電力量で発電単価を 比較すれば、潮流発電パネルを用いた係留型潮流発電船及び係留型海中支持潮流発電施設の経済性とメンテナビリティの高さは極めて魅力的である。





2.図面による説明


(1)発電モードにおける抗力中心に係留点7を設ける直接係留型潮流発電パネル

図 1 に発電パネル 8 の枠構造体に係留索 6 の係留点 7 を設けた直接係留型発電パネルの基本形を示す。
直接係留型発電パネルを持つ双胴船    図1.直接係留型発電パネルを持つ双胴船

特願 2014-214841「潮流発電に用いる海底基礎と係留索」にて「係留中継点」「中継ブイ」というコンセプトを明らかにした。
これにより、予め有望な海域には海底基礎 3 と基礎側係留索 4 と中継ブイ 5 を設置しておき、黒潮の流路変動が発生すれば直ちに最適発電サイトを求めて発電パネルを 格納モード 9 に保った係留型発電船を移動させ、船側係留索 6 を浮上している中継ブイに接続することによって海底基礎と基礎側係留索とに繋がることができ、迅速に基礎と基礎側係留索とに繋がることができ、迅速に発電モード 8 に入ることができる。
直接係留型発電パネルを持つ双胴船
図2.直接係留型発電パネルを持つ双胴船


(2)補助係留索22付き直接係留型

係留索 6 の係留点 7 を抗力中心点 21 より下方に設けることにより発生する反時計回りト ルクを係留中継点 5 より発する補助係留索22 を係留点 23 に接続して発生する時計回り のトルクと平衡させる。
双胴船・パネル系の姿勢自由度が減り、ヨーイング等に対する安定性が増すと考えられる。
補助係留索付き直接係留型発電パネル
図3.補助係留索付き直接係留型発電パネル


(3)船体短縮式直接係留型発電パネル

抗力中心点 21 より下方に係留点 7 を設け、係留点 7を軸として抗力が発生する反時計回りのトルクと、浮力中心点 24 と発電パネルの懸垂点 12 が離れているために発生する時計回りのトルクを平衡させて、発電パネル 8 に対する船体の全長を短くできる。
船体短縮式直接係留型
図4.船体短縮式直接係留型


(4)潮汐流用直接係留型発電パネル

発電パネル 8 の前後に対称に海底基礎(3 と 31)、基礎側係留索(4 と 32)、係留中継点(5 と 33)、船側係留(6 と 34)、係留点(7 と 35)などを配することで、1 日に 4 回流路が反転する潮汐流にも対応できる直接係留型潮流発電船のスキームが成立する。
潮汐流用直接係留型潮流発電船
図5.潮汐流用直接係留型潮流発電船


(5)係留型海中支持潮流発電施設

中継ブイを側方から見た中央部断面図
図6.係留型海中支持発電パネル
後方から見た中央部断面図
    図7.左は自立型発電パネル、右は係留型発電パネル
図7の左図は特許第 5622013 号「集合型潮流発電施設」にあった自立型主柱 構造体 52 に発電パネル 44 を設けた方式。右図は発電パネル 44 に脚部 45を設けて海底基礎 46 上に固定し、支柱 47 により海上に上部構造体 48 を設けた係留型海中支持発電パネルを示した。 自立型の主柱構造体は 300~600mに及ぶ強固で巨大な構築物でに及ぶ強固で巨大な構築物である。その建設は困難を極め、その費用は巨額となって潮流発電の経済性を損なうと思われた。その代案が係留型海中支持潮流発電施設である。海底基礎の個数が多いのが懸念材料であるが、構造体としての費用は発電船と大きくは異ならない。発電ユニットを取り外して海底基礎から解放すれば、発電パネルの枠構造体、脚部、支柱等の浮力により海上に浮上できる。陸上のドックまで作業船で曳航して、大規模メンテナンスを陸上で行うことが可能なように構成されている。
















(6)高抗力化突出部63を有する発電パネル

潮流発電パネルが秒速 2mの潮流に正対しているとしよう。この幾何学的構成は潮流を部分的に堰き止める部分堰を設けて強制的に圧力差(水頭)を作り出す。前述第六の手段に挙げたように、この潮流発電パネルの抗力係数が 1.3 であるとき、1であるとき、 m2当たり 277kg 重の抗力を生じ、それは約 27 cmの水頭に相当する。この水頭が発電ユニットでコの水頭に相当する。この水頭が発電ユニットでコ ンバージョン・ダイバージョンノズル効果(パネル面積に対してタービン駆動面積が小さいため、水流を絞る作用が発生する)により加速された水流となって潮流発電パネルの潮流対向面積 1 m2当たり約 5kW の電気出力を発生し、前述抗力と平衡する抗力を生ずる。
この流速では、一般の水力タービンの 1 m2当たりの出力は約 2kW であるから、それと比較して、潮 流発電パネル方式の面積当たり出力は 2 倍強(理論値は約 2.6 倍)とかなり大きい。
平板状のパネルの抗力係数は約 1.15 であるが、図 8 のようにパネルを囲むように前方に突出部 63 を 設けると、抗力係数が 1.3 程度まで上昇する。この上昇分だけ発電出力の上限が増加している。
同じ潮流対向面積当たり、発電パネル方式はオープン潮流中にある水力タービンより 2 倍以上の出力 が得られる。
なお、図 8 で集合保持体 64、発電ユニット65 である。
高抗力化突出部
図8.高抗力化突出部


3.コメント

(1)この発明は特許第 5656155 号「多胴船型潮流発電施設」及び特許第 5622013 号「集合型潮流発電施設」を補完する。この発明の核心は「発電パネルに直接係留索を繋ぐ」ことである。事実は 2013/12/16に「多胴船型潮流発電施設」を出願する時点では、既に図 1 と図 2 に相当するアイディアを得ていた。
この時は「まだまだバリエーションがありそうだ」と気づいて、とにかく前述特許願の提出を急ぎ、じっくり時間を掛けて本発明を練り上げた。図 3、図 4 辺りまでは普通の流れであったが、図 5 の「潮汐流用直接係留型」に至った時には「こんな大事なものを見逃していたか」と本当に驚いた。
図 6 の「係留型海中支持発電パネル」はかなり飛躍したアイディアであると感じた。

(2)現在の日本の高層ビルの高さは 300m前後である。新宿の高層ビル群の間を歩いていて、よく幻の主 柱構造体が現実の高層ビルに重なって現れるのを見た。これよりももっと高く、運転状態で数万トン重 の水平荷重を常時受ける自立式の主柱構造体を海底の岩盤の上に建設するのは現実的なのだろうか。
そのような構築物の海中数百mでのメンテナンスは可能だろうか。この疑念が直接係留式発電パネル の思考過程で一つの答えを出してくれた。

(3)現時点では、黒潮発電は係留型発電船が本命であると考えている。数次の実証試験と実用化展開を経 て決定版に収斂させ、これを大量生産して太平洋上に展開する。最終版では人工知能による自律式無 人運転方式としたい。
経済的に潮流発電が可能である地点には海底基礎と中継点浮上式の係留索システムを広範に張り巡らし、黒潮の流路変動に敏速に対応できる態勢を執る。中継ブイも破壊活動を防ぐ警備システムを備えたものとする。やるべきことは山積している。

出願 2015/3/4
2015/3/20  桐生悠一