日本のエネルギー自立への道
桐生 悠一
[黒潮発電資料2]

特許第5622013号 集合型潮流発電施設




1.概 要



(1)要 約 書

【課題】潮流発電に関しては、最適単機容量の観点から導かれる最適設計の指針がまだ確立しておらず、また、多数台利用する場合のメンテナビリティの高い技術について提示されることが少なかった。
【解決手段】発電方式が水力タービン発電機の場合、出力は面積に比例し、所要資材量は体積に比例する2乗3乗則が存在するから、単機容量は海中で実用できる範囲で小さめに設定し、所要台数を多くし、多数のタービン発電機の交換メンテナンスを容易とする自動着脱装置を利用する。
潮流の秒速を 2.5mとした場合、深さ 200m、幅 1km の集合型発電施設は約 380 万 kW の出力を得られると試算され、巨大ではあるが現在技術の射程範囲内にある魅力あるエネルギー源となりえる。


(2)発明の効果

本発明になる集合型潮流発電施設は、規格化された単機容量が比較的小さい発電ユニットを大量に幾 何学的に密集させて構成するものであり、発電ユニットには量産技術の適用が容易であり、発電ユニ ットを所定位置に装着する保持体に対する多数の発電ユニットの装着と交換を自動着脱装置により行 うことで、多数台数の発電ユニットの保守管理を容易にして、総合経済性と実用性に優れた潮流発電 方式を提供するものである。


(3)産業上の利用可能性

例えば深さ 200m、幅 1km の集合型発電施設の総出力は 380 万 kW となり、大型原子力発電所の2 基分を超す電力を生産することができる。建設費は大きいが、特に費用がかかる主柱構造体や保持体 は構造的に複雑ではなく、長期間の使用に耐えると思われる。また、単機容量が小さい発電ユニット の製品価格は本質的に安価であり、保持体との機械的・電気的インターフェースを維持できるなら、 より高性能の設計が提案された場合の乗り換えも容易であり、総合経済性で原子力発電に勝る可能性 がある。特に日本は潮流発電に適した多くの海域に恵まれており、安定した信頼できるエネルギー源 として、潮流発電の実用化は国家的プロジェクトになりうると思われる。
発生した電力は、海底ケーブルを用いて直流送電によって需要地に届けるのが第一の選択肢であるが、 需要地が遠隔地の場合は、潮流発電施設の海上のデッキに電気分解による水素製造プラントを設置し、 デッキに埠頭を設けてタンカーによる海上輸送により水素を需要地に届ける第二の選択肢もあり得る。 その場合、主柱構造体等は水素タンクや酸素タンクとしても使用可能であることも考慮に入れて、予 め計画したい。





2.図面による説明



(1)保持体1、発電ユニット2と自動着脱装置3

1数十 kW 級の小出力発電ユニット 2 を数千〜数万台という多数台、平面状の保持体 1 に集合的に密集装荷すること、
2自動着脱装置 3 により発電ユニットを自動交換できることが本発明の中核である。
1は3L2 乗 3 乗則と4量産技術の活用のため、2はメンテナビリティ向上のためである。
発電ユニットは保持体への着脱動作で同時に機械的結合と電気的結合を自動的に成立、解除できる。
発電ユニット
図1.発電ユニットの装荷状況


(2)発電ユニット2の断面図

発電ユニットの外形は角形ダクト構造体である。筆者が想定しているのは、20 フィートドライコンテナー(2,438W×2,382H×6,058L)程度か、やや大きいサイズである。流速 2.0m の時、出力50〜75kW となる。
発電ナセル 11 の内部は数十気圧の水圧に耐えるよう油封され、均圧機構により内外の水圧差を平衡させる。
垂直断面図
図2.垂直断面図
45度斜め断面図
図3.45度斜め断面図












(3)自動着脱装置3の構造

保持体 1 に設置されたレールを把握して自律的に垂直方向に移動して故障した発電ユニットを装荷された空間から引き出して収納空間 17 内へ取り込み、1 段上って収納空間 18 に持ってきた交換用の発電ユニットを装荷する。
潮流の抗力を考慮して、交換作業は上流側から行う。
流速が早い海中ではエレベータのようなケーブルは使えない。
重力バランスは浮体 20 が受け持つ。横方向への移動は海上のデッキで行う。
自動着脱装置の側面図
図4.自動着脱装置の側面図


(4)全体構造

海底 6 に主柱構造体 7 が自立し、その延長上に海上のデッキ 9、その上に電力プラント、水素プラント、管制システム等の諸設備 10 が設置されている。
100 台の発電ユニットと保持体の集合を4 として示した。
水深が 300〜500mと浅く、水路が変動しないトカラ列島等の海域になら設置可能と考えている。
直接電力のまま、陸地への送電も可能だし、水素化して需要地への輸送も可能である。
全体像
図5.海中支持型集合型潮流発電施設の全体像


3.コメント


(1)古典的技術の集積体系で、図面を見れば容易に理解可能と思われる。
(2)311 の東日本大震災以来、考え続けた黒潮発電で本命としたのは係留型潮流発電船であった。だが 船体に係留索を係留すると発電パネルに加わる巨大な抗力により、船体の姿勢を安定に保てなくなる 姿勢不定性を解決する適切なアイディアが得られなかった。止むなくその課題は一旦棚上げして、と にかく潮流発電が可能な幾何学的構成を求めて、この海中支持型潮流発電施設に至った。
(3)主柱支持体 7 は 300~500mの水深の海域に設置された数万トン重の抗力を受ける巨大構築物である。 計算上は原子力発電所に匹敵する巨大自然エネルギ―源になり得ると思われるが、その実現可能性は 主柱構造体の成否に懸かっている。一つの可能性として示した。


出願 2013/11/27、特許権取得 2014/10/3
2015/3/20  桐生悠一