日本のエネルギー自立への道

桐生 悠一


2.自然エネルギー・黒潮発電の勧め

黒潮は世界最大級の海流であり、エネルギー資源として考えた時、日本の EEZ 内にその多くが含まれ ている。黒潮の駆動力は偏西風と日照による海水温の上昇とコリオリ力であり、何れも太陽エネルギー の現在のフローから得られるエネルギー形態である。化石燃料と違って取り尽くす心配がない。
NEDO は「日本の海域での海流エネルギーの賦存量は約 205GW(20500 万 kW)」と試算しており、日 本の年間平均電力需要量 15000 万 kW を超える潜在力がある。但し、何でもそうであるが、それを利用 し尽くすことは困難である。NEDO はその内の 0.63%が利用可能と診断しているが、これは現在進行 中の幾つかの開発計画の実力から推論された過小評価ではないかと筆者は考える。
黒潮の典型的な強流帯は水平方向は巾 100km、垂直方向は海面から深さ 200m付近までの表層流である。 黒潮は海域によっては年単位で時々流路を変える蛇行現象が発生する。
筆者の提案になる「発電パネル方式」による「係留型双胴発電船」は、数値例を挙げると海面から下へ 200mまでの長さと 150mの巾を有する発電パネルは流速 2m/s の時、黒潮断面 1 m2当たり約 5kW、計 15 万 kW の電力が得られると試算されている。発電パネルを懸垂する双胴船の浮力は 2 万トン程度が必 要である。これは黒四発電所の総出力のおよそ半分であり、これを 2 隻建造しても黒四ダムを建造する よりコストは相当低いと推定される。電力は水素に姿を変えて需要地へと供給される。このような係留 型双胴発電船を 100 隻も黒潮の強流帯に分散配置すれば、 1500 万 kW、日本の年間平均電力需要量の約 10%相当の電力で作られた水素が得られる。この提案になる係留型発電船の長所は次のようである。
(1)黒潮の流路変化に容易に追従できる。
(事前設置海底基礎・中継ブイ係留索方式)
(2)事前設置海底基礎の係留索を長くしておけば、1000~2000mの水深の水域にも対応できる。
(同上)
(3)海底基礎建設以外にメンテナンスのため海中へ立入る必要がない
(発電パネル海上跳上方式)
(4)量産技術が適用可能な数十 kW 級発電ユニットを多数集積する方式であり、同一断面積当たりの資材 使用量が大型機少数台使用より格段に少なく、経済性が著しく高い。(L2 乗 3 乗則)
(5)小型機なのでマテハン装置で自動着脱でき、海上でのメンテナンス業務の簡素化・自動化ができる。
(6)発電パネル方式は風力型発電機の2倍強の単位断面積当たりの出力が得られ、小型大出力化できる。