日本のエネルギー自立への道
桐生 悠一
[黒潮発電資料4]

特願2014-197487 潮流発電に用いる水力発電ユニット



1.概 要


(1)要 約 書

【課題】潮流発電に関しては、最適単機出力の観点から導かれる最適設計の指針がまだ確立しておらず、また、発電ユニットを多数台利用する場合のメンテナビリティの高い技術について提示されることが少なかった。
【解決手段】同じ総発電出力を達成するのに、大単機出力・少数台を使用する方式より、小単機出力・多数台を使用する方式の方が総資材量が少なく、寸法的に量産技術により製造できるため製造コストを低減でき、小型・軽量であるため取付枠からの着脱も自動化でき、メンテナンスの全作業を海上で行うよう構成でき、潮流発電の開発と実用化を容易にする。


(2)発明の効果

本発明は規格化された単機出力が比較的小さい発電ユニットを大量に幾何学的に密集させて大出力潮 流発電施設を構成せんとするものであり、同一総発電出力に対して、従来の単機出力が大きい設計よ りも単機出力が小さい故に使用台数が多くても総資材量が格段に少なくて済む。また、形状が単純で 保守が容易な発電ダクト構造とすることにより、コンバージョン・ダイバージョンノズルを容易に設 けることができて、発電能力を格段に向上でき、更に、小型故に量産技術の適用が可能となって製造 コストも格段に少ない総合経済性に優れた潮流発電施設を提供することができる。


(3)産業上の利用可能性

海洋エネルギー利用の中でも潮流(海流)発電は巨大な潜在力があることを理解されながらも、現状 では最も開発が遅れている。その主たる理由は、沿岸から遠いため送電線の敷設が困難で採算が取れ ないこと、海中での施設建設や保守作業が現行技術では極めて難易度が高く、敬遠されていることな どである。本発明は発電船方式の水素プラント用発電施設の中核装置である発電ユニットを安価に提 供する技術を提供し、加えて保守作業は全て海上で行うことにより、海中での作業を一切要しない技 術を提供することにより、黒潮に代表される潮流エネルギー利用への開発と実用化を容易にする。



2.図面による説明


(1)発電ユニット1の主要構造

図1は発電ユニットの断面図である。本体1、ダクト構造体 2 は 45 度平面ではコンバージ ョン・ダイバージョンノズル 3 が見られるが、垂直面内では見られない。パイロン 5 に支持されたハッチ断面は発電ナセル 6、ナセルのコーン 7、水力タービン 8 とコーン 9 の主軸はナセル内部に油封シールを通って軸受 12、遊星ギア増速機 13 を経て高周波発電機 14 を駆動する。ナセル内部は動的粘度が高くない潤滑油(エンジンオイル級)で満たされており、均圧機構 15 により外部の海水の水圧と平衡に保たれている。高周波発電機 14 は 3 相の 400~2000Hz と想定している。ここで発電された電力はケーブル 16 を経て電磁カップラー17 から保持体の電磁カップラーへと電力を送り込む。
発電ユニット内部には水力タービンの不均衡回転や軸受、増速機等の状態を監視する音響・振動センサー、温度センサー、海水の侵入を知らせる Na センサー等を装備する。
発電ユニットの断面図    図1.発電ユニットの断面図



(2)プレス加工によるナセル、パイロン一体成形

図 2 は複雑な形状をなすナセルとパイロンをプレス加工を主体とする加工方法で一気に製作しようとする。発電機本体を挿入・嵌するナセル内部シリンダー19 は軸方向のコリュゲート加工により半径方向に大きな強度を有する。これにナセル・パイロン複合板 18 を 4 枚スポットウェルド等で一体に接合することで、機械的強度を必要とするこの複雑な構造体が量産技術により製造できる。発電ユニットは消耗品であり、耐久寿命 5〜7 年と想定している。思い切った量産技術の採用が望まれる。
ナセル・パイロン複合体
図2.ナセル・パイロン複合体






3.コメント


(1)ネットで検索したら、「日本車馬力ランキング」に「新車で買うことができる日本車の馬力ランキングです(2014/11/10 現在)」が出ていた。1 位 600PS(441kW)~10 位 330PS(243kW)である。あの小さな車体(コンテナと較べて)にこれだけのピークパワーを数年間に亘って維持できるエンジン、ギアト レイン、軸受を詰め込める技術をカーメーカーは有している。
潮流発電で要求されているのは定格出力僅か 75kW の軸受、増速機、高周波発電機である。カーメー カーの技術者の手にかかれば、「全く問題ない」対象であろう。
(2)カーメーカーは現在、水素化社会実現の先駆けとして FCV の実用化に踏み出している。彼等こそ産 業界において、今日現在、数百 Hz 領域の同期電動機(発電機)、インバータ、各種センサー技術、非接 触充電用電磁カップラー、燃料電池、水素ステーション、エンジンルーム内の潤滑油の取り扱い、板 金プレス構造体、それらの量産技術に最も習熟している技術者集団である。ここには潮流発電の発電 ユニットが必要とする技術が全て揃っている。
(3)多分、発電ユニットの水力タービンは 40%程度の効率しか要求されない。それ以上の効率があっても、 発電パネル方式の物理的限界で高効率は活かされない。それでも発電パネル方式はオープンな潮流中 に置かれた通常の水力タービンと比較して、同じ潮流対向面積当たりの出力が 2 倍以上になる。高効 率はタービンでは処理しきれず、バイパス流となってカルマン渦を盛大にするだけではないかと今は 考えている。このため、流体力学よりも量産技術に重きを置いた取り組みが有効だと考える。


出願 2014/9/9
2015/3/20  桐生悠一