日本のエネルギー自立への道

桐生 悠一


3.離島地下原子力発電・水素製造の勧め

福島第一原発で水素爆発が起こって風下が広範囲に放射能汚染され、多数の福島県民が人生を変えられ る大きな被害を被ったのは、放射能の塵芥が巻き上がって降り注いだ地域に多数の住民が生活していた からである。技術者から見ると「ここまで厳正にやるのか」と思われるほど厳格な原子力規制委員会が 再稼働を許可した原発を、住民の申し立てにより地裁が「運転してはならない」と決定できるのは、万 一の事故で被害を受けることを心配する住民の世論があるからである。もはや日本では、数十 km 圏内 に住民がいる場所では新設の原子力発電所の建設はできない。
一方、 過疎化が進む日本では数十 km 圏内に業務関係者以外の一般住民がいない離島が幾つも存在する。 そのような離島の、更にその地下に原子力発電所を建設すれば、万一の過酷事故であっても被害は地下 空間に閉じ込められて、住民に被害が及ぶことがない。
廃炉に当たっても、核燃料の再処理のための搬出が終わったら、原子炉を解体することなく、その場で コンクリート詰めにして地下空間へのトンネルを閉鎖して最終処分とすることができる。余った地下空 間は地下 50m ルールを満足する仕様に従っていれば、今後の各地の廃炉に伴って発生する炉内構造物 を含む放射性廃棄物を受入・埋設することもできる。この地下空間は最初は原子力発電所のサイトとし て、次いで放射性廃棄物の最終処分場として二度のお勤めを果たすことができる。
さて、多くの場合、離島は本土から充分に離れているために、電力をケーブルで送電することが経済的 に成立しない。幸い、日本は水素化社会のトップランナーたるべく官民共同で走り出している。離島地 下原子力発電所の電力で水素を製造し、それを専用タンカーで需要地へ向けて輸送することで、水素化 社会インフラの一翼を担うことができる。

詳しくは離島地下原子力資料 1をご査見ください。