炭素化によるごみ処理法
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炭素化によるごみ設備の見学
年月日:2008年11月4日(火)
場 所:EEN工場(埼玉県入間市入間工業団地)
参加者:小金井市ごみ対策課、小金井市ごみ処理施設建設場所選定等市民検討委員会、小金井市ごみゼロ推進会議、小金井市環境市民会議、NPO法人シニアSOHO小金井、トンボの会他の有志 21名
1.EEN21型炭素化ゴミ処理実証設備の動作原理
  基本原理は「窒素雰囲気中でゴミを熱分解して、炭などの有用資源を分離回収する処理方法」である。
工程を説明すると、
    ①電気炉内の空気を完全に窒素ガスに置換後、
    ②150℃で加熱して水分を蒸発させ、
    ③300℃に保って塩素成分を蒸発させ、
    ④450℃に昇温して有機物を分解させ、
    ⑤その温度を保って内容物を炭素化させ、
    ⑥内部を100℃以下まで冷却後に残留物を取り出す。
投入ゴミ重量に対し、処理後の重量は10分の1から30分の1にまで減量する。
ゴミ中の金属は、窒素雰囲気中の加熱であるため酸化せず、金属光沢を保ったまま残留物中より回収できる。
炉内は高温であっても発生ガスによって大気圧より若干圧が高く保たれて窒素雰囲気が維持され、発生ガスは自然にパイプにより外部に導かれ、粉塵分離装置、油分分離装置、排ガス中和装置を通って排出される。
排ガスにはCO2は含有せず、中和装置等で冷却されており、室内にそのまま出せる程度にクリアーである。
(磁気選鉱器等で)金属や(振動篩等で)無機物等を分離して残る物質の主成分は炭素である。この炭素は土壌改質剤、有害ガスや有害液状物質の吸着固定、その他の目的に利用できる有用な物質である。(ゴミの再資源化!)
処理物が剪定屑や木材チップ、竹材等の場合は、②水分蒸発工程で木酢、竹酢が回収できる。
処理物中のプラスチック等は、③④工程で油分として回収できる。
2.実証施設見学
 長野室長より工場入口で全般の説明を受け、佐藤社長より施設に密着して具体的なお話しを聞いた。写真撮影や接近調査を許され、実証設備EE21について細部を知ることができたことを感謝する。実証設備は午前6時にゴミをチャージして作業にかかり、我々の到着時には冷却工程を終え、我々に熱分解槽の扉を開放する段階から見学させていただいた。

実証設備の熱分解槽は内容量8㎥、1日3バッチで4㌧を処理できる。

断熱材はセラミックファイバー、現品は運転時間が3,000時間に及ぶが問題ないという。

窒素ガスは膜分離法の設備より得ており、最初の工程で窒素ガスが99.8%になった段階でシーズヒーター(10㎾×14本(両横各5本、下4本))で加熱する。或る程度昇温すると加熱しなくても反応が進むので、使用電力はゴミ1㎥(500㎏)当たり電力700円(約70kWh相当)だという。

冷却工程の水冷管は上部に7系統数十本が配置されている。

粉塵分離装置、水分・油分分離装置は並列に2系統、その後に縦置きタンクの上部から水を霧状にスプレーして排気ガス中の水溶性成分を吸収する吸収糟が直列に2糟、最後に中和液(消石灰溶液)中をガスが潜る中和糟を置き、室内に排気している。排気量は少なく、呼吸しても安全という。
3.質疑応答
●この処理方式は日本無線が新規事業にすべく当社と共に開発したのだが、日本無線の経営事情が悪化、2年目で開発の継続を断念し、現在は当社独自の事業となっている。
●トヨタ系のメーカーと自動車のシュレッダーダストの処理設備を3年間にわたって実証運転して、高評価を得ている。80㌧/日の能力を有する。
●マーレシア政府が本技術を高く評価し、商用1号機を同国で設置する商談が進んでいる。(来週、主だったメンバーが同国に出張する予定)
●神奈川県の埋め立て処分場で降雨時に滲み出る有毒汚水を現在は巨大設備で処理・無害化している。その汚水を本実証設備で生産した炭の粉末で濾過したら、全く無害化された清浄水が得られた実績がある。
●11/6に長野県小諸市の議会が本実証設備を見学に来る。
●本方式で生産される炭の粒子がナノオーダーの超微粒子であるために生じる特別の性質についての説明は、知見のない私には理解できなかった。
4.感 想
 「無分別ゴミを熱分解処理する」という同社の基本方針は数年にわたる実証実験によって実現されていると判定する。
 実証設備の細部まで点検したが、確かに安定に運転できるとの心証を得た。
大気圧下で窒素雰囲気中で最高温度450℃での運転条件は極めて緩和的な値で、設備の耐用年数が極めて長いであろうことを確信させる。 設備を部品レベルで判断すると、特に高額な部品も見当たらず、開発費の回収を含めても設備価格はリーズナブルなレベルに落ち着きそうだ。
 処理後のアルミや銅線等が光沢を有したまま回収可能なのも頼もしい能力である。

 実用化にあたっては次の点が改良されるであろう。
  (1)ゴミの投入、処理品の回収の自動化
  (2)熱分解糟の扉等の動作の自動化
  (3)窒素ガス貯留タンクを設置して窒素パージ時間の短縮
  (4)クーリングタワーによる水の冷却による冷却工程時間の短縮
  (5)分離された水分(木酢系)、油分(軽油系?)、排気ガスの無害化の実行と確認

 この処理方式は再資源化がウリになっている。確かに無分別ゴミから得た炭でも、最終処分場の浸出液体の吸着固定化等の低級用途には使用可能である。そのような無分別炭でも有害有機物は含んでいないと思われる。しかし、不揮発性の有害重金属等は炭に混入して残るであろう。(環境に再放出される可能性は低い)

 償却費・運転費で経済性があれば、ゴミの減容目的には好適なゴミ処理方式であると思われる。
しかし、再資源化に重点を置いて、処理炭を河川の浄化や土壌改良材等の高度利用に対しては、(分別された)身元が確かな食品加工廃棄物や樹木剪定クズなど、不揮発性有害物質を含まないことが確信できる対象に限る必要があるのではなかろうか。

以 上(報告者 桐生悠一)